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浴室で事故が多い理由|”滑る・跨ぐ・温度差”の3つの危険を、設計で減らす

実施設計の教科書#21 浴室で事故が多い理由― 転倒48%の危険空間 いえのキホン
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実施設計の教科書 #21

寸法(mm)と人の動きから、間取りの「ちょうどいい」を決める。一級建築士の視点で、実施設計の考え方をまとめたシリーズです。

SHEET — 浴室の安全の要点S = 1:実施設計の教科書 21 / kobayan

結論:浴室の事故は、滑る・跨ぐ・温度差の3つの危険が重なって起きます。どれも、設計の段階で減らすことができます。

  • 高齢者の自宅での転倒事故は、場所別で浴室・脱衣所が最も多い(消費者庁)
  • 家庭の浴槽での高齢者の溺死は2019年に4,900人。交通事故の死者数を上回っている
  • 浴槽の縁は、洗い場から40cm前後の高さが跨ぎやすいとされる
  • 滑りにくい床・手すり・暖かい脱衣室が、事故を減らす基本

浴室は、家で一番危ない場所かもしれない

浴室は、毎日使う、くつろぎの場所です。でも同時に、家の中で事故が起きやすい場所の一つでもあります。

消費者庁が医療機関から集めた情報では、65歳以上の高齢者が自宅で転倒した事故のうち、場所がわかったものの中で浴室・脱衣所が最も多くなっていました。

そして、家庭の浴槽での高齢者の溺死は、2019年に4,900人にのぼり、2011年以降は交通事故による死亡者数を上回っています。この記事では、浴室の危険と、設計でできる対策を整理します。

浴室の3つの危険

危険起きること設計でできる対策
滑る濡れた床、石けんで転倒滑りにくい床材、水はけのよい床
跨ぐ浴槽の出入りでバランスを崩す浴槽の縁の高さ、手すり、腰かけられる場所
温度差寒い脱衣室・浴室と熱いお湯で体調が急変脱衣室と浴室を暖める、断熱(#22)

床が滑りやすい

浴室の床は、水と石けんで滑りやすくなります。最近のユニットバスは、滑りにくく、水はけがよく、乾きやすい床が増えています。素足で立って確かめるのが一番確実です。

浴槽を跨ぐ動作

浴槽の出入りは、片足立ちになる不安定な動作です。特に、浴槽から出るときは、体が温まってふらつきやすくなっています。

浴槽の縁の高さも大切

浴槽の縁が高すぎると跨ぎにくく、低すぎると浴槽の中が深くなって、出入りしにくくなります。一般に、洗い場からの縁の高さは40cm前後が跨ぎやすいとされています。縁に腰かけてから足を入れられるように、腰かけられる幅のある浴槽も便利です。

手すりは、どこに付ける?

場所役割
浴室の出入口段差やドアを越えるときに、体を支える(縦の手すり)
浴槽の横浴槽を跨ぐとき、立ち上がるときに体を支える
洗い場椅子から立ち上がるときに体を支える

今すぐ必要なくても、壁の中に手すり用の下地を入れておくと、必要になったときに簡単に取り付けられます。

温度差(ヒートショック)

冬、暖かい部屋から寒い脱衣室で服を脱ぎ、熱いお湯につかると、血圧が大きく変動します。浴室の事故の多くが冬(11月〜3月)に起きているのは、このためと考えられています(#22 ヒートショックを防ぐ間取り)。

住宅性能も大切

家全体の断熱性能が高いと、部屋ごとの温度差が小さくなり、脱衣室や浴室も冷えにくくなります(性能設計の教科書 #07)。

浴室の事故を減らす5つのコツ

  1. 滑りにくい床を選ぶ:素足で立って確かめる
  2. 浴槽の縁は40cm前後に:腰かけられる幅があると、さらに安心
  3. 手すりと下地を用意する:出入口、浴槽の横、洗い場
  4. 脱衣室と浴室を暖める:暖房、断熱
  5. 出入口の段差をなくす:つまずき防止と、将来の介助のために
建築士のメモ

浴室の打ち合わせでは、浴槽の大きさや色、機能に目が向きがちです。でも、毎日のことだからこそ、滑らない床、跨ぎやすい高さ、手すりの下地といった「安全の基本」を先に確かめてください。ショールームでは、浴槽を実際に跨いでみるのがおすすめです。

わかっていること、いないこと

テーマわかっていること注意点
浴槽での溺死家庭の浴槽での高齢者の溺死は2019年に4,900人。2011年以降、交通事故死者数を上回る冬に多い。持病のない人でも起きることがある
自宅での転倒の場所消費者庁の事故情報では、場所がわかった転倒のうち浴室・脱衣所が最も多かった医療機関から集めた情報で、すべての事故を網羅していない
浴槽の縁の高さ40cm前後が跨ぎやすいとされる体格や身体の状態で、ちょうどいい高さは変わる

浴室の安全を確かめる5つの質問

  • □ 床は、濡れても滑りにくいか
  • □ 浴槽の縁の高さは、跨ぎやすいか
  • □ 手すり、または手すり用の下地があるか
  • □ 冬に、脱衣室と浴室を暖められるか
  • □ 出入口に段差がないか

浴室の事故のよくある質問(FAQ)

Q. 若い家族だけなら、対策はいりませんか?

小さな子どもも、浴室で転倒や溺水の事故が起きやすい年代です。また、家は何十年も住むものなので、今の対策が将来の安心につながります。

Q. 手すりは、後から付けられますか?

壁の中に下地があれば、後から簡単に付けられます。下地がない場合は、壁を補強する工事が必要になることがあります。

Q. 入浴で気をつけることは?

消費者庁は、入浴前に脱衣所や浴室を暖める、湯温は41度以下、湯につかるのは10分までを目安にする、浴槽から急に立ち上がらない、食後すぐや飲酒後の入浴を控える、といった点をすすめています。

まとめ|浴室の安全は、設計で減らせる

  • 浴室は、家の中で事故が起きやすい場所の一つ
  • 危険は、滑る・跨ぐ・温度差の3つ
  • 滑りにくい床、跨ぎやすい浴槽、手すりの下地が基本
  • 脱衣室と浴室を暖め、家全体の断熱を高める

浴室の安全は、毎日の小さな危険を、設計で一つずつ減らしていくことで守られます。家族の今と将来を思い浮かべて、浴室を見直してみてください。

おすすめ|浴室の安全性は第三者目線が効く

一級建築士・こばやんより

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この記事を書いた人|メガネ建築士(一級建築士・ハウスメーカー設計士/150棟以上の住宅設計)
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