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土地選びは何から見る?|建築士が契約前に確かめる「お金・法規・地盤・暮らし」

いえのキホン
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家づくりロードマップ STEP3|土地

はじめての家づくりを、入居までの7つのSTEPに分けて整理したシリーズです。この記事は、STEP3「土地」の全体像をまとめたページです。

SHEET — 土地選びの要点S = 1:ロードマップ STEP3 / kobayan

結論:土地は「良さそうな土地」から探すのではなく、総額 → 法規 → 地盤・災害 → 暮らしの順に確かめると、判断がぶれにくくなります。

  • 土地代の割合は地域で大きく違います。フラット35の調査では、土地付注文住宅の土地取得費は全国平均で総額の約3割、首都圏では約4割でした
  • 建ぺい率・容積率・高さ制限・接道で、その土地に建てられる家の上限が先に決まっています
  • 地盤改良・擁壁・造成・引き込み工事は、土地の価格表に出てこない費用です。ハザードマップと土地の成り立ちで、先に当たりをつけます
  • 土地は単体で比べず、その土地に建つプランと総額をセットで比べます

ネットで土地を探していると、「南向き・日当たり良好」「駅徒歩10分」「相場より割安」といった言葉が並びます。どれも魅力的に見えて、「早く決めないと売れてしまうかも」と気持ちが急ぐこともあると思います。

ただ、打ち合わせの席で土地の資料を見せていただくと、気になる点が後から見つかることは少なくありません。建ぺい率が思ったより厳しい、前面道路が建築基準法上の道路として扱われるか確認が必要、擁壁の書類がない。どれも、広告の言葉には出てこない情報です。

この記事では、一級建築士・宅地建物取引士として、土地を見るときの順番を整理します。完璧な土地はありません。予算・広さ・立地・形は、どこかを取ればどこかを譲る関係にあります。だからこそ、譲ってはいけない条件を先に確かめる順番が大切になります。

お金:土地予算は「総額から逆算」して決める

最初に決めたいのは、土地の上限額です。物件の相場から考えるのではなく、家づくりの総額(土地・建物・諸費用・外構・予備費)から逆算します。土地にかけすぎると、建物や外構を削ることになり、「土地は良いのに家が窮屈」という結果になりやすいからです。

参考に、住宅金融支援機構の「2024年度 フラット35利用者調査」で、土地付注文住宅の土地取得費と建設費を地域別に見ると、次のようになります。

地域土地取得費建設費合計土地の割合
全国1,495万円3,512万円5,007万円約30%
首都圏2,285万円3,506万円5,791万円約39%
近畿圏1,826万円3,367万円5,193万円約35%
東海圏1,360万円3,616万円4,976万円約27%
その他の地域985万円3,549万円4,534万円約22%
出典:住宅金融支援機構「2024年度 フラット35利用者調査」。土地の割合は、土地取得費÷合計で筆者が計算。フラット35利用者の平均で、諸費用や外構費は含みません。

全国平均では土地が約3割ですが、首都圏では約4割、地方では2割台です。「土地は総額の3割」は一つの目安にはなりますが、住む地域の相場によって大きく変わります。割合よりも、建物に必要な金額を先に確保して、残りを土地の上限にする考え方のほうが、地域を問わず使えます。

もう一つ注意したいのが、土地の価格表に出てこない費用です。古家の解体、地盤改良、擁壁の補修、造成、上下水道やガスの引き込み、境界の確定などは、土地によって必要かどうかが変わります。安く見える土地ほど、これらが重なっていないかを確かめます。

法規:その土地に「建てられる家」の上限を先に知る

土地には、建てられる家の大きさや高さの上限が、法律や条例で先に決められています。間取りの夢を広げる前に、次の項目を確かめます。役所の窓口や、市区町村が公開している都市計画図(用途地域などを確かめられる地図)で、自分でも調べられます。

項目何が決まるか確かめ方
用途地域建てられる建物の種類や、周りにどんな建物が建ちうるか都市計画図
建ぺい率敷地面積に対する建築面積(建物を真上から見た面積)の上限都市計画図・重要事項説明書
容積率敷地面積に対する延床面積(各階の床面積の合計)の上限同上。前面道路の幅で上限が下がる場合もある
高さの制限道路斜線・北側斜線・絶対高さ・日影規制など。3階建てや屋根の形に影響都市計画図・役所の建築指導課
接道建築基準法上の道路に2m以上接しているか。接していないと原則として建てられない役所の道路台帳・建築指導課

道路は「見た目」ではなく「法律上の扱い」で見る

建築基準法第43条では、建物の敷地は建築基準法上の道路に2m以上接していなければならないと定められています。その道路は原則として幅4m以上です。ただし、幅4m未満でも、建築基準法ができた当時から建物が立ち並んでいた道で、特定行政庁が指定したものは「2項道路」として道路とみなされます。

2項道路に面した土地では、道路の中心線から2mの範囲には建物や塀をつくれません(セットバック)。この部分は敷地面積に数えられないため、広告の面積どおりに家を建てられないことがあります。逆に、見た目は道路でも、建築基準法上の道路として扱われない通路もあります。前面道路の種類は、契約前に役所で確かめます。

旗竿地は「法律の最低ライン」と「使いやすさ」を分けて考える

旗竿地(細い通路の奥に敷地が広がる土地)も、通路部分で道路に2m以上接していれば、建築基準法の接道の条件は満たします。ただ、自治体によっては条例で通路部分の幅が上乗せされています。たとえば東京都の建築安全条例では、通路部分の長さが20mを超えると幅3m以上が求められます(建物の規模や構造によってはさらに広く)。

法律を満たしていても、車を止めて乗り降りするには幅2mでは窮屈です。設計の現場での目安としては、通路部分に車を止めるなら幅2.5m前後は欲しいところです。旗竿地は価格が抑えめなことが多いぶん、通路の幅・長さと、奥の敷地の日当たりをセットで確かめます。

地盤と災害:見えない費用とリスクを先に調べる

土地の見た目からは、地盤の強さも、水害の起きやすさもわかりません。ただ、契約前でも当たりをつける方法はあります。

ハザードマップと「土地の成り立ち」を見る

国土交通省の「重ねるハザードマップ」では、洪水・土砂災害・津波などの想定区域に加えて、地形分類(土地の成り立ち)も地図に重ねて見られます。周りより高い台地・段丘は河川氾濫のリスクがほとんどない一方、川との高低差が小さい低地や谷底平野は、大雨のときに注意が必要とされています。

なお、2020年8月28日から、不動産の売買では、重要事項説明のときに水害ハザードマップ上での物件の位置を説明することが宅建業者に義務づけられました。ただし説明は契約の直前です。気になる土地が出た段階で、自分で先に見ておくことをおすすめします。

地盤改良費は、工法によって大きく変わる

戸建て住宅の地盤調査は、多くの場合、スクリューウエイト貫入試験(旧スウェーデン式サウンディング試験。棒を地面にねじ込んで地盤の硬さを調べる方法)で行います。調査は土地を買った後、建物の配置が決まってから行うのが一般的なので、契約前に改良が要るかどうかを確定させることはできません。

改良が必要になったときの費用は、工法と地盤の状態、建物の大きさで変わります。設計の現場での目安は次のとおりです。

工法向いている地盤費用の目安(延床30坪前後)
表層改良弱い層が地表から浅い(2m程度まで)数十万円程度
柱状改良弱い層がもう少し深い100万円前後
鋼管杭弱い層が厚く、深いところに硬い層がある100万円を超えることも
設計の現場での目安です。地域・業者・地盤の状態によって変わるため、実際の金額は見積もりで確かめてください。

契約前にできるのは、近くの地盤調査データや、旧地名・古い地図で田んぼや池だった場所でないかを確かめることです。総額の計画には、地盤改良の予備費をあらかじめ入れておくと安心です。

高低差のある土地は「擁壁の書類」を確かめる

道路や隣地と高低差がある土地では、擁壁(土を支える壁)が安全かどうかが大きな分かれ目です。高さが2mを超える擁壁は、建築基準法で工作物として確認申請が必要です。検査済証などの書類がない古い擁壁や、ひび割れ・はらみ・水抜き穴の詰まりがある擁壁は、つくり直しや補強を求められることがあり、大きな費用になりえます。

また、2023年5月に施行された「宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)」により、規制区域内の盛土や造成は都道府県知事などの許可の対象になっています。造成地を検討するときは、規制区域に入っているかと、造成の許可や検査の記録が残っているかを確かめます。

暮らし:図面に写らないものは、現地で何度か見る

通勤・通学の時間や買い物の便利さは、地図である程度わかります。わからないのは、時間帯や季節による変化です。朝の通勤時間の交通量、夜道の明るさ、休日の音、雨の日の水たまり。できれば平日と休日、朝と夜、雨の日に現地へ行ってみてください。

日当たりは、太陽が一番低くなる冬至のころを想定します。南側の隣地がいまは空き地や平屋でも、将来2階建てや3階建てが建つ可能性があります。隣地の用途地域と高さの制限を確かめておくと、「将来どこまで影が伸びうるか」の見当がつきます。

広告の言葉の裏で、確かめたいこと

広告の言葉そのものが悪いわけではありません。ただ、言葉の裏で起きやすいことを知っておくと、確かめる場所がはっきりします。

広告の言葉起きやすいこと確かめたいこと
南向き・日当たり良好南側に高い建物が建つと、冬に日影になる南側隣地の用途地域と高さの制限、冬至の日影
相場より割安造成・地盤改良・解体・引き込みで総額が上がる安い理由を仲介会社に直接聞く
眺望の良い高台擁壁のつくり直しや補強が必要になる擁壁の高さ・検査済証・築年・劣化
静かな行き止まり道路の扱いによっては建て替えが難しい建築基準法上の道路か、接道2m以上か
駅近で便利騒音・人通り・車の出入りが多い平日の夜と休日に現地を再訪する
整形地・広々セットバックで有効な面積が減る前面道路が2項道路かどうか

土地は「建物プランとセット」で比べる

同じ面積の土地でも、形・方位・道路の位置・法規によって、建てられる家はまったく変わります。気になる土地が出てきたら、その土地でどんな間取りがいくらで建つかを、住宅会社に出してもらって比べます。

  • 土地探しの前か、遅くとも同時に、住宅会社の候補を決めておく
  • 気になる土地ごとに、配置と間取りの概略、建物と付帯工事の概算を出してもらう
  • 土地代+建物+付帯工事+諸費用の総額で並べて比べる

建築条件付き土地(土地の売主や指定の会社で建てることが条件の土地)の場合は、建物を建てる会社が実質的に決まります。一定の期間内に建物の契約を結ぶ条件がついていることも多いので、建物の仕様や価格を先に確かめてから検討します。

👓 建築士のメモ

土地の資料をお持ちいただいたとき、打ち合わせで最初に確かめるのは「前面道路の種類」と「この土地に駐車場を何台とれるか」です。この2つで、建物の配置と大きさがほぼ決まるからです。土地の購入を決める前に、ざっくりとした配置図を一枚描いてもらうだけでも、「思っていた家が入らない」というずれはかなり防げます。土地探しと住宅会社のどちらを先にするかは、土地探しと住宅会社、どちらが先?で詳しく書いています。

わかっていること・言い切れないこと

資料で確かめられること
  • 用途地域・建ぺい率・容積率・高さの制限
  • 前面道路が建築基準法上の道路か、接道の長さ
  • ハザードマップ上の想定区域と土地の成り立ち
  • 地域ごとの土地代の平均(フラット35利用者調査など)
契約前には言い切れないこと
  • 地盤改良が要るかどうかと、その金額
  • 隣地に将来どんな建物が建つか
  • 周辺の環境や土地の価格が、この先どう変わるか
  • 「土地は総額の何割」が、あなたの家計に合うか

契約前に確かめたい5つのこと

  1. 総額で比べたか:土地代+建物+付帯工事(地盤改良・引き込み・外構)+諸費用で、予算に収まるか
  2. 法規を調べたか:用途地域・建ぺい率・容積率・高さの制限で、希望の大きさの家が入るか
  3. 道路を確かめたか:建築基準法上の道路に2m以上接しているか。2項道路ならセットバック後の面積はいくらか
  4. 災害と地盤を調べたか:ハザードマップ、土地の成り立ち、擁壁の書類と状態
  5. 現地を何度か見たか:平日と休日、朝と夜、雨の日。冬の日当たりと隣地の将来も想像したか

状況別に読む|土地の悩みから探す

よくある質問

Q. 土地にはいくらまでかけていいですか?

決まった割合はありません。総額(土地・建物・諸費用・外構・予備費)を先に決め、建てたい家に必要な建物の金額を確保した残りを、土地の上限にします。フラット35の調査では、土地付注文住宅の土地取得費は全国平均で合計の約3割、首都圏では約4割でした。

Q. 古家付きの土地や変形地は避けたほうがいいですか?

避ける必要はありません。古家付きなら解体費と滅失登記の手間、変形地なら建物の形と駐車場のとり方を確かめ、そのぶんを価格と比べて判断します。変形地は、設計の工夫で使いやすくなることも多い土地です。

Q. 地盤改良費はどれくらい見ておけばいいですか?

工法によって大きく変わります。設計の現場での目安は、表層改良で数十万円程度、柱状改良で100万円前後、鋼管杭では100万円を超えることもあります。地盤調査は土地の購入後に行うのが一般的なので、総額の計画に予備費として入れておくと安心です。

Q. 建築条件付き土地はやめたほうがいいですか?

一概には言えません。建物を建てる会社が実質的に決まるので、その会社の仕様・価格・間取りの自由度に納得できるかが判断の分かれ目です。建物の契約までの期間が決まっていることも多いので、条件を先に確かめてください。

Q. 旗竿地の通路は何m必要ですか?

建築基準法では、道路に2m以上接していれば接道の条件を満たします。ただし自治体の条例で、通路が長い場合などに幅が上乗せされることがあります(東京都では長さ20m超で幅3m以上など)。通路に車を止めるなら、設計の現場での目安として幅2.5m前後は欲しいところです。

Q. 土地と住宅会社、どちらを先に決めればいいですか?

住宅会社の候補を先に決めるか、土地探しと同時に進めるのがおすすめです。気になる土地にどんな家がいくらで建つかを、その場で確かめられるからです。

まとめ|土地は「順番」で見極める

  • 土地の予算は、相場ではなく家づくりの総額から逆算する
  • 法規と道路で、その土地に建てられる家の上限を先に知る
  • 地盤・擁壁・災害リスクは、ハザードマップと書類で当たりをつける
  • 暮らしの良し悪しは、時間帯や天気を変えて現地で確かめる
  • 土地は単体ではなく、プランと総額のセットで比べる

いま気になっている土地があれば、「その土地で、どんな家がいくらで建つか」を一度書き出してみてください。土地の良し悪しは、その答えがあって初めて比べられるようになります。

参考文献

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記事内の金額は公的な調査の平均値と、設計の現場での目安です。実際の費用や借入額は、土地・建物の条件や家計によって変わります。資金計画は、住宅会社や金融機関、ファイナンシャルプランナーにもご相談ください。
この記事を書いた人|メガネ建築士(一級建築士・宅地建物取引士・ハウスメーカー設計士/150棟以上の住宅設計)
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