敷地・外構・緑まで、土地全体で暮らしを設計する。一級建築士の視点で、家の外側の考え方をまとめたシリーズです。
結論:庭は「広さ」ではなく、何をして過ごすかから考えます。「庭がある」と「庭を使う」は、まったく別のことです。
- 使われない理由は、暑い・丸見え・出にくい・手入れが大変のどれかが多い
- リビングからすぐ出られる庭ほど、使われやすい
- ウッドデッキは、テーブルと椅子を置くなら奥行き1.8m以上がひとつの目安
- 手入れの手間は、地面の仕上げで大きく変わる
「せっかくだし、広い庭がほしいですよね!」
家づくりでは、庭付き、南庭、ウッドデッキにあこがれる人が多いものです。最初は「子どもを遊ばせたい」「バーベキューをしたい」「外でくつろぎたい」と夢が広がります。
でも実際には、見るだけの庭になっている家もかなりあります。
- 夏は暑すぎる
- 外から丸見え
- 虫が多い
- 手入れが大変
- 出るのが面倒
こうして、だんだん庭に出なくなります。この記事では、庭が使われない理由を整理し、使われる庭のつくり方を建築士の視点でまとめます。
「広い庭=使いやすい」ではない
庭を広くとっても、夏に暑い、丸見え、ぬかるむ、座る場所がない、となると、意外と使われません。
逆に、小さくても落ち着く、緑が近い、座れる場所がある庭は、よく使われます。大事なのは面積より、居場所です。
庭が使われない4つの理由
| 理由 | 起きていること | 対策 |
|---|---|---|
| 暑い | 日差しが直撃する、照り返しが強い | 木陰や軒、パラソルで日陰をつくる(#07) |
| 丸見え | 道路や隣の家から見える | 植栽や格子でやわらかく遮る(#05) |
| 出にくい | 段差が大きい、遠回り、靴を履き替える | リビングからすぐ出られる位置に、段差を少なく |
| 手入れが大変 | 草取り、芝刈り、デッキの塗り直し | 手入れの手間が少ない仕上げを選ぶ |
使われない庭は、この4つのどれか、または複数が重なっていることがほとんどです。
「出やすい庭」は、使われる
意外と大切なのが、家との距離感です。リビングからすぐ出られる、段差が少ない、デッキやテラスがある庭は、気軽に出られます。
逆に、遠回りしないと出られない、段差が大きい、毎回サンダルを探す、という庭は、だんだん面倒になります。動線が、庭の使われ方を決めるのです。
リビングの床とデッキの高さをそろえると、室内の延長として使いやすくなります。
ウッドデッキは、「広さ」より使い方
大きなデッキをつくっても、暑い、汚れる、管理が大変だと、使われなくなります。デッキの大きさは、そこで何をするかから決めましょう。
| 使い方 | 奥行きの目安 | ポイント |
|---|---|---|
| 腰かけて庭を眺める | 90cm程度 | 縁側のような使い方 |
| 小さなテーブルと椅子でお茶 | 1.5m程度 | 2人でくつろげる |
| テーブルと椅子で食事 | 1.8m以上 | 椅子を引いて座れる余裕がある |
| 子どもが遊ぶ、洗濯物を干す | 用途に合わせて | 物干しの位置や、日当たりも一緒に考える |
この奥行きは、家具の大きさと人の動作から考えた目安です。天然木か人工木か、屋根をかけるかどうかで、手入れの手間と使いやすさも変わります。
手入れの手間は、「地面の仕上げ」で決まる
| 仕上げ | 見た目 | 手入れ | 向いている使い方 |
|---|---|---|---|
| 天然芝 | やわらかく、緑が気持ちいい | 芝刈り、水やり、雑草取りが必要 | 子どもが裸足で遊ぶ |
| 人工芝 | 一年中緑 | 比較的楽。ただし夏は表面が熱くなる | 手入れの時間がとれない家庭 |
| 砂利 | 自然な印象 | 雑草対策の防草シートと組み合わせると楽 | 通路、建物の周り |
| タイル・コンクリート | すっきり | 掃除が楽。照り返しに注意 | テラス、物干し場 |
| グランドカバー(地を這う植物) | やわらかい緑 | ある程度の手入れが必要 | 芝より手間を減らしたい場所 |
全部を一つの仕上げにするより、使う場所と眺める場所で分けると、手入れの負担と使いやすさのバランスがとりやすくなります。
庭の「用途」を先に決める
建築士は、庭を考えるとき、まず何をする庭かを整理します。
- 眺める庭:リビングから見える緑。出なくても価値がある
- くつろぐ庭:デッキやテラスで、お茶や食事
- 遊ぶ庭:子どもが走り回る、水遊び
- 働く庭:物干し、家庭菜園、自転車置き場
一つの庭に全部を詰め込むと、どれも中途半端になりがちです。用途ごとに場所を分けて考えると、小さな庭でも使える場所がつくれます。
使われる庭をつくる5つのコツ
- 用途を決める:眺める、くつろぐ、遊ぶ、働く。何をする庭か
- リビングからすぐ出られる位置に:段差を少なく、床とデッキの高さをそろえる
- 日陰をつくる:木陰、軒、パラソル。夏も出られる庭に
- 視線をやわらかく遮る:植栽や格子で、落ち着いて過ごせる庭に
- 手入れできる量にする:使う場所と眺める場所で仕上げを分ける
庭の打ち合わせでは、「広さ」と「芝生にするかどうか」から話が始まることが多いです。でも、本当に使われる庭になるかどうかは、リビングとのつながり方でほぼ決まります。間取りを考えるときに、「この窓から庭に出る」「ここでお茶を飲む」という場面を一緒に描いてみてください。
わかっていること、いないこと
| テーマ | わかっていること | 注意点 |
|---|---|---|
| デッキの奥行き | テーブルと椅子を置くには、家具と動作の寸法から1.8m程度が必要 | 家具の大きさや使い方で変わる |
| 地面の仕上げと手入れ | 芝や植物は手入れが必要で、タイルや砂利は比較的楽 | 地域の気候や日当たりで、手入れの手間は変わる |
| 庭の使われ方 | 動線や日陰、視線が使われ方に影響する、というのは設計の実務での経験則 | 庭の利用頻度を調べたデータは限られている |
庭をつくる前に確かめたい5つのこと
- □ その庭で、何をして過ごしたいか決めたか
- □ リビングから、段差少なくすぐ出られるか
- □ 夏に日陰になる場所があるか
- □ 道路や隣の家から、丸見えにならないか
- □ 手入れの手間が、自分たちの暮らしに合っているか
使われる庭のよくある質問(FAQ)
Q. 天然芝と人工芝、どちらがいいですか?
天然芝は見た目と足ざわりがよく夏も比較的涼しいですが、芝刈りや水やり、雑草取りが必要です。人工芝は手入れが楽ですが、夏は表面がかなり熱くなります。手入れにかけられる時間と、子どもが裸足で遊ぶかどうかで選びましょう。
Q. ウッドデッキは、天然木と人工木のどちらがいいですか?
天然木は風合いがよい一方、数年ごとの塗り直しなど手入れが必要です。人工木は手入れが楽ですが、夏は表面が熱くなりやすいものもあります。屋根をかけるかどうか、日当たりも含めて選びましょう。
Q. 庭はいらない、という選択はありですか?
ありです。手入れの負担を減らすために、庭を小さくして駐車場や室内を広くする選択もあります。その場合でも、リビングから緑が少し見える場所をつくると、暮らしの心地よさが変わります。
まとめ|庭は、暮らしの場所
- 「庭がある」と「庭を使う」は別のこと
- 使われない理由は、暑い・丸見え・出にくい・手入れが大変
- リビングからすぐ出られる庭ほど、使われやすい
- 用途を決めて、手入れできる量でつくる
庭は、建物のまわりの空白ではありません。暮らしの一部になる場所です。広さより、そこで過ごす時間を思い描いて、庭の形を決めてみてください。
次に読む
シリーズの前の回。丸見えの家が落ち着かない理由です。

シリーズの次の回。南向きの庭なのに居心地が悪い理由です。

敷地利用計画の回。庭を含めた敷地全体の配置の話です。

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