寸法(mm)と人の動きから、間取りの「ちょうどいい」を決める。一級建築士の視点で、実施設計の考え方をまとめたシリーズです。
結論:ポーチの幅は、1200mmが最低限、1500mm以上で快適です。そして、濡れない玄関には、ポーチの広さと同じくらい屋根の出が大切です。
- 長い傘を開くと、直径は約1000〜1100mm
- 1200mmのポーチでは、傘を閉じながら扉を開けると窮屈
- 1500mm以上あると、傘を閉じる・子どもを抱えるなどの動作に余裕
- 雨は斜めに降るので、屋根の出(庇)は深いほど扉まわりが濡れにくい
とりあえず1200mmにしていませんか?
玄関ポーチ(玄関ドアの外側の床)の幅は、1200mm前後で設計されることが多いものです。晴れた日は問題ありませんが、雨の日に、その狭さに気づくことがあります。
傘の大きさを甘く見ない
一般的な長い傘は、開くと直径が約1000〜1100mmになります。ポーチの屋根の下で、傘を閉じ、しずくを払い、扉を開ける。この一連の動作には、傘の大きさに加えて、体を動かす余裕が必要です。
ポーチ幅別の体感
| ポーチの幅 | 雨の日の体感 |
|---|---|
| 約900mm | 傘を閉じきる前に、扉の前に立つことになる |
| 約1200mm | 1人なら出入りできるが、傘を閉じながら扉を開けると窮屈(最低限) |
| 約1500mm | 傘を閉じる、荷物を置く、子どもを抱えるなどの動作に余裕(快適) |
| 約1800mm以上 | 家族が同時に出入りできる。ベビーカーや自転車も置きやすい |
抱っこ+傘問題
子どもを抱っこしながら傘をさして帰ってきたとき、ポーチが狭いと、傘を閉じる、鍵を開ける、扉を押さえる、という動作を同時にしなければならず、子どもも自分も濡れてしまいます。子育て期には、ポーチの広さの差がはっきり出ます。
「濡れない玄関」の条件
- ポーチの幅:1500mm以上あると動作に余裕
- 屋根の出(庇)の深さ:雨は斜めに降るので、深いほど扉まわりが濡れにくい
- 扉の開く向き:開いた扉が雨よけになる向きか(#02 玄関ドアの吊元)
- 床の素材:濡れても滑りにくいタイル
ポーチの床を広くしても、屋根の出が浅いと、雨の日は結局濡れてしまいます。床と屋根をセットで考えましょう。
自転車やベビーカーの場合
ポーチに自転車やベビーカーを置く、玄関から出し入れする家庭では、さらに広さが必要です。置き場所を玄関の外にするか、土間収納にするかもあわせて考えましょう(玄関まわり完全ガイドの土間収納)。
よくある失敗
- ポーチは広いのに、屋根の出が浅くて濡れる
- 傘を閉じる場所がなく、玄関の中に水が入る
- 扉を開けると、ポーチの幅いっぱいになって人が立てない
- 雨の日にタイルが滑る
ポーチを決める5つのステップ
- 幅を1500mm以上にできるか確かめる
- 屋根の出を深くする
- 扉の開く向きを確かめる(#02 玄関ドアの吊元)
- 滑りにくい床を選ぶ
- 自転車・ベビーカーの置き場所を決める
玄関ポーチは、外観の印象を決める場所でもありますが、毎日の使いやすさは「雨の日」に決まります。傘をさして、荷物を持って、玄関の前に立ったときのことを想像して、ポーチの幅と屋根の深さを決めてみてください。アプローチ全体の考え方は、敷地設計の教科書 #04でも書いています。
わかっていること、いないこと
| テーマ | わかっていること | 注意点 |
|---|---|---|
| 傘の大きさ | 一般的な長い傘は、開くと直径約1000〜1100mm | 傘の種類で大きく違う |
| ポーチの幅 | 1200mmは最低限、1500mm以上で快適というのは設計の実務で広く使われる目安 | 家族構成や使い方で変わる |
| 屋根の出と雨 | 屋根の出が深いほど、扉まわりは濡れにくい | 風の強さや向きで、雨の吹き込みは変わる |
ポーチを決める前に確かめたい5つのこと
- □ ポーチの幅は1500mm以上あるか
- □ 屋根の出は、扉まわりを雨から守れる深さか
- □ 扉を開けても、人が立つ余裕があるか
- □ 床は、濡れても滑りにくい素材か
- □ 自転車やベビーカーの置き場所を決めたか
ポーチ幅のよくある質問(FAQ)
Q. ポーチを広くすると、費用は上がりますか?
床の面積と屋根の面積が増えるぶん、費用は上がります。ただ、毎日の使いやすさへの効果は大きいので、優先度は高いと思います。
Q. 屋根の出は、どれくらいあればいいですか?
地域の雨や風によって違いますが、扉の前に立つ人が濡れにくい深さを目安にしましょう。袖壁(横の壁)を付けると、横からの吹き込みも防げます。
Q. ポーチに段差は必要ですか?
雨水が玄関に入らないように、ポーチと玄関の土間には小さな段差をつけることが多いです。将来の車いすを考えるなら、段差を小さくする工夫も検討しましょう。
まとめ|濡れない玄関は、幅と屋根で決まる
- ポーチの幅は、1200mmが最低限、1500mm以上で快適
- 長い傘は開くと直径約1000〜1100mm
- 屋根の出(庇)を深くすると、扉まわりが濡れにくい
- 扉の向き、床の素材、置き場所も一緒に考える
ポーチは、雨の日に家族を迎える場所です。晴れの日の図面だけでなく、雨の日の動きから寸法を決めてみてください。
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📐 一級建築士・こばやんより
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シリーズの前の回。玄関ドアの吊元で住み心地は変わる?という話です。

玄関まわりの実施設計 完全ガイド。玄関ホール・土間収納・ベンチです。

敷地設計の教科書。玄関までの5秒で家の印象が決まる話です。



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