結論:道路斜線は、道路の反対側の境界線から引く斜めの線。断面図で見ると一発でわかる。
- 勾配は住居系1.25、それ以外1.5。かかる範囲(適用距離)は用途地域と容積率で20〜50m
- 高さは前面道路の路面の中心から測る
- 建物を道路から下げると、下げた分だけ反対側の境界線も外側にあるとみなせる
- 本番では、2本の道路・公園・高低差・天空率など緩和の組み合わせまで出る。四肢択一の発展問題つき
一級建築士試験は、腹が減る。
施主からの電話。「2階の天井、もう1m高くできませんか?」。設計者なら一度は聞くお願いです。そして頭に浮かぶのが、斜線制限。
『メガネ建築士の合格めし』第2話は、昼休みのサンドイッチカフェが舞台。切り口の美しいクラブハウスサンドで「断面図」を、窓の外の斜めに削られたビルで「道路斜線制限」を覚えます。
前回の第1話「建ぺい率と容積率」はこちら。

- 令和9年(2027年)の試験日程は未発表(例年3月上旬に発表)。7月下旬の日曜(7月25日想定)で数えています
- 道路斜線をはじめとする高さ制限は、法規30問のなかでも毎年のように出る頻出テーマ
- 法令集では、建築基準法56条と別表第3、施行令130条の12〜135条の2あたりを引けるようにしておきましょう
漫画|第2話「断面図はサンドイッチで覚える」








※法規・試験の情報は2026年11月時点のものです。最新の情報は法令集や公式発表でご確認ください。
※作画には画像生成AIを使用しています。
断面図の基本|切断位置・断面・見えがかり・隠れ線
断面図は、建物をある位置で垂直に切って、その切り口と奥に見えるものを描いた図です。サンドイッチを半分に切ると中身の層が見えるのと同じです。
| 用語 | 意味 | 描き方の目安 |
|---|---|---|
| 切断位置 | どこで切ったか | 平面図に一点鎖線と矢印(見る方向)で示すのが一般的 |
| 断面 | 切り口そのもの(壁・床・屋根の切れたところ) | 太い実線 |
| 見えがかり | 切り口の奥に見えるもの(窓・建具・家具など) | 細い実線 |
| 隠れ線 | 手前のものに隠れて見えない部分 | 破線 |
断面図をさらに詳しく描き、床の高さ・天井高・軒の高さ・各部の納まりまで示したものが矩計図(かなばかりず)です。斜線制限のチェックは、この断面の考え方で行います。
道路斜線制限とは?「道路の反対側から引く斜めの線」
道路斜線制限は、道路の日当たりや風通しを守るために、道路側の建物の高さを抑えるルールです(建築基準法56条1項1号・別表第3)。
・住居系の用途地域:勾配 1.25
・それ以外の用途地域:勾配 1.5
例:住居系・前面道路6m・道路境界線ぎりぎりに建てる → 6×1.25=7.5m(前面道路の中心からの高さ)
どこまでかかる?「適用距離」
道路斜線は敷地全体にかかるわけではなく、前面道路の反対側の境界線から一定の距離(適用距離)までの範囲にかかります。適用距離は、用途地域と容積率で決まります。
| 用途地域 | 勾配 | 適用距離 |
|---|---|---|
| 住居系(第一種・第二種低層住居専用、田園住居、第一種・第二種中高層住居専用、第一種・第二種住居、準住居) | 1.25 | 容積率200%以下:20m/300%以下:25m/400%以下:30m/400%超:35m |
| 近隣商業・商業 | 1.5 | 容積率に応じて20〜50m |
| 準工業・工業・工業専用 | 1.5 | 容積率に応じて20〜35m |
高さは「前面道路の中心」から測る
- 道路斜線の高さは、敷地の地盤面ではなく前面道路の路面の中心から測る(令2条1項6号イ)
- 階段室・昇降機塔などで、水平投影面積が建築面積の1/8以内のものは、12mまでは高さに算入しない(令2条1項6号ロ)
- 棟飾り・防火壁の屋上突出部などは高さに算入しない(令2条1項6号ハ)
道路斜線の緩和|本番で差がつくのはここ
| 緩和 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 後退距離(セットバック) | 建物を道路境界線から後退させると、後退した距離だけ反対側の境界線が外側にあるものとみなす | 法56条2項・令130条の12 |
| 住居系で前面道路が12m以上 | 反対側の境界線から「前面道路の幅×1.25」以上の区域では、勾配を1.5にできる | 法56条3項・4項 |
| 前面道路が2以上 | 広い道路の境界線から、その幅の2倍以内かつ35m以内の区域などでは、狭い道路も広い道路と同じ幅とみなす | 令132条 |
| 道路の反対側に公園・広場・川など | 反対側の境界線は、公園などの反対側の境界線にあるものとみなす | 令134条 |
| 敷地が道路より1m以上高い | (高低差-1m)×1/2だけ、道路面が高い位置にあるものとみなす | 令135条の2 |
| 天空率 | 天空率の基準を満たせば、道路斜線を適用しない | 法56条7項 |
漫画の「下がれば、高くできる」は、いちばん上の後退距離による緩和です。後退した部分に置ける門・塀・物置などには条件があるので(令130条の12)、実務では外構計画とセットで考えます。
漫画の試験問題|解答
▶ 解答と解説をひらく
第二種住居地域は住居系なので勾配1.25。前面道路は12m未満なので、勾配1.5への緩和はなし。
後退距離2m → 反対側の境界線も2m外側にあるとみなす。
外壁の位置での水平距離:2+8+2=12m
高さの限度:12m×1.25=15m(前面道路の中心から)
※水平距離12mは、住居系の適用距離(最小20m)の範囲内
発展問題|本番と同じ四肢択一
本番の法規と同じ形式で、第2話の範囲から3問。
- 道路斜線制限は、前面道路の反対側の境界線からの水平距離に応じて適用される。
- 第一種中高層住居専用地域内における道路斜線制限の勾配は、1.25である。
- 建築物を前面道路の境界線から後退させた場合、前面道路の反対側の境界線は、その後退距離だけ外側にあるものとみなす。
- 道路斜線制限における建築物の高さは、敷地の地盤面から算定する。
▶ 正解と、選択肢ごとの解説をひらく
正解:4
1. 正しい。法56条1項1号・別表第3。
2. 正しい。住居系の用途地域は1.25(別表第3)。
3. 正しい。法56条2項。
4. 誤り。道路斜線の高さは前面道路の路面の中心から算定する(令2条1項6号イ)。
- 前面道路の反対側に公園がある場合、前面道路の反対側の境界線は、当該公園の反対側の境界線にあるものとみなす。
- 敷地の地盤面が前面道路より1m以上高い場合、その高低差から1mを減じたものの1/2だけ高い位置に前面道路の路面があるものとみなす。
- 天空率の基準に適合する建築物については、道路斜線制限は適用しない。
- 階段室で、その水平投影面積の合計が建築面積の1/8以内のものは、道路斜線制限の高さの算定において、その高さにかかわらず全部算入しない。
▶ 正解と、選択肢ごとの解説をひらく
正解:4
1. 正しい。令134条。
2. 正しい。令135条の2。
3. 正しい。法56条7項。
4. 誤り。算入しないのは12mまで。12mを超える部分は高さに算入する(令2条1項6号ロ)。
- 9.0m
- 11.25m
- 12.0m
- 13.5m
▶ 正解と、選択肢ごとの解説をひらく
正解:4(13.5m)
1. 誤り。後退距離を考えず、6m×1.5としている。
2. 誤り。勾配を住居系の1.25で計算している(9m×1.25)。
3. 誤り。
4. 正しい。近隣商業地域は勾配1.5。水平距離=1.5+6+1.5=9m。9m×1.5=13.5m。
第2話のチェックリスト
- □ 断面図の切断位置・断面・見えがかり・隠れ線の違い
- □ 道路斜線の勾配(住居系1.25/それ以外1.5)と、反対側の境界線から測ること
- □ 適用距離が用途地域と容積率で決まること
- □ 高さは前面道路の中心から。階段室などは1/8以内なら12mまで不算入
- □ 後退距離の緩和(下げた分だけ反対側も外側)
- □ 2以上の道路・公園など・高低差・天空率の緩和
道路斜線は、条文を読むだけでは解けません。断面をイメージして、緩和を組み合わせて計算する練習が必要です。私自身、総合資格学院で学び、一度の挫折を経て一級建築士に合格しました。図解と演習を繰り返せる環境は、独学との大きな差になります。
実務と試験の違い|建築士の本音
試験では、道路斜線の問題は「1本の線」を引ければ解けます。でも実務では、もっと多くの線が重なります。
- 道路斜線のほかに、隣地斜線・北側斜線・高度地区・日影規制が同時にかかり、いちばん厳しいものが効いてくる
- 3階建ての住宅では、道路斜線が天井高や屋根の形を決めることが多い。施主の「もう1m」は、屋根勾配の向きを変えるだけで解決することもある
- 天空率を使うと、斜線より自由な形にできる場合がある。ただし計算と図書の作成に手間がかかる
漫画の悠介のように、施主の要望を断る前に「どの緩和が使えるか」を考えるのが、設計者の腕の見せどころです。
受験生のあなたへ|あわせて読みたい


家を建てる人にも関係ある話
道路斜線は、とくに狭い道路に面した土地で3階建てを考えるときに効いてきます。「天井を高くしたい」「ロフトをつけたい」という希望が、斜線で叶わないことも。逆に、建物の配置を少し下げるだけで解決することもあります。
天井の高さの決め方と、図面(断面図)の読み方は、こちらの記事で詳しくまとめています。


道路斜線制限のよくある質問(FAQ)
Q. 道路斜線は、法令集のどこを引けばいい?
建築基準法56条1項1号と別表第3です。緩和は法56条2項〜4項・7項、施行令130条の12、132条、134条、135条の2を引けるようにしておきましょう。
Q. 平屋でも道路斜線はかかる?
かかります。ただし平屋は高さが低いので、通常の道路幅であれば斜線に当たることはまれです。
Q. 道路斜線と北側斜線、どちらが厳しい?
敷地の向きや用途地域によります。低層住居専用地域などでは、北側斜線や絶対高さの制限のほうが効くことも多いです。北側斜線は次回の第3話で扱います。
Q. 天空率とは?
建物を見上げたときに見える空の割合です。計画した建物の天空率が、斜線制限に適合する建物の天空率以上であれば、斜線制限を適用しないことができます(法56条7項)。
Q. 高度地区とは何が違う?
高度地区は都市計画で定める高さの制限で、自治体ごとに内容が違います(法58条)。斜線制限とは別にかかるので、両方を確認する必要があります。
この連載は、法規→構造→設備→計画→施工と続きます。「次回も読みたい」の気持ちを、合格への勉強につなげたい方は、講座の中身を一度のぞいてみてください。
次回予告|隣地斜線と北側斜線
第3話は商店街のたい焼き屋が舞台。道路の次は、隣地斜線と北側斜線。北側のお隣さんの日当たりを守るルールを覚えます。「また食べるんですね。」「勉強だ。」


コメント