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👓🏡✨ 家の中に、”自分だけの居場所”をつくる ― 建築士が考えるヌックの設計思想 ― 📚🪟🌿

いえのコダワリ
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いえ いえのコダワリ 家の中の”居場所”設計 ― ヌック論 🏷 個別空間編

📌 この記事は 実施設計の教科書・個別空間編 から派生した独立記事です。

家の中に、「ここに来ると落ち着く」という場所がありますか。

広いリビングでもなく、しっかりした個室でもない。なんとなく狭くて、なんとなく暗くて、でも不思議と安心できる、あの感覚。

それを設計の言葉で「ヌック(nook)」と呼びます。

📌 この記事でわかること
・ヌックとは何か(建築士的定義)
・なぜ今ヌックが注目されているのか
・設計するときに意識すべき寸法と位置
・「つくってよかった」と感じるヌックの条件


ヌックとは何か ― 建築士的な定義

ヌック(nook)は、英語で「隅」「くぼみ」を意味します。

設計的にいうと、完全に独立した部屋ではなく、空間の一部がほんの少しだけ奥まっていたり、天井が低くなっていたり、壁に囲われていたりして――「そこだけ、空気が違う」小さな領域のことです。

面積でいえば2〜3畳程度。でも「広さ」の話ではありません。

ヌックの価値は、「隔てること」ではなく「包まれること」にある。

扉で仕切るとそれは「部屋」になってしまいます。
でもヌックは違う。家族とつながりながら、それでも自分の時間がある。

その「ゆるい境界」こそが、ヌックを特別にしている理由です。


なぜ今、ヌックが注目されているのか

2025〜2026年にかけて、「ヌック」という言葉が住宅業界で急速に広がっています。

その背景には、いくつかのことが重なっています。

在宅ワーク・リモートの定着

コロナ以降、「家の中で仕事をする時間」が増えました。
でも専用の書斎をつくるほどの面積がない家庭がほとんど。

そんな中で「完全な個室じゃないけれど、集中できる場所」としてヌックが機能することがわかってきました。

共働き・子育て世代の「ひとり時間」不足

共働きで毎日忙しく、子育てをしていると「自分だけの時間」が極端に少なくなります。
でも、「個室がほしい」というよりも「少しだけひとりになりたい」という感覚に近い。

ヌックは、そのグラデーションにちょうど合っています。

AI時代の「人間的な余白」への渇望

SNSもAIも、情報は溢れるばかりです。
そういう時代だからこそ、「何もしない場所」「ぼーっとできる隅っこ」が価値を持つ。

人は原始的に、洞窟のような「背後が守られた空間」に安心感を覚える生き物です。
建築家のドロシー・ローソンは、これを「Prospect and Refuge(展望と隠れ処)」理論と呼んでいます。

広い景色が見えながら、自分は守られている。
ヌックはその感覚を、小さな家の中につくりだします。

📐 建築士が考える、ヌックの設計ポイント

「なんかいい感じのヌック」は、偶然できません。設計の積み重ねです。

① 天井高さ ― 低いほど「包まれる」

一般的な天井高さは2400〜2500mm。ヌックの天井は、それより低い1900〜2100mmが心地よい。

これは、人が椅子に座ったときの目線が約1200mm程度であることと関係しています。
天井との距離が700〜900mm程度になると、「包まれる感覚」が生まれやすい。

💡 天井高さの目安
座位の目線(1200mm)+ゆとり(700〜900mm)= ヌックの天井高さは1900〜2100mm が心地よい

② 間口と奥行き ― 「抱えられる」サイズ感

ヌックは、「広すぎると意味がない」空間です。
人ひとりが座って、両側の壁を少し感じられる間口が理想。
具体的には間口900〜1200mm、奥行き600〜900mm程度。
これは、ベンチシートや小さな窓辺のスペースに相当します。

「2畳あればいいか」と広げると、途端にただの「角」になってしまいます。
“ちょうど自分のサイズ”であることが、ヌックの本質です。

③ 位置 ― 「見えながら、隠れる」場所

ヌックを設計するとき、私がいつも考えるのは「どこから何が見えるか」です。

リビングの一角に置くのか、窓辺に置くのか、階段下に置くのか。
それぞれに「見えるもの」と「守られ方」が違います。

理想は、家族の気配を感じながら、自分は視線に入りにくい場所。
キッチンから見えるリビングの角ではなく、リビングの少し奥まった壁際。
そういう位置が、ヌックを「使いたくなる場所」にします。

④ 光 ― 「差し込む光」があるかどうか

ヌックに小さな窓が一つある、ということの価値は思いのほか大きい。

昼間、そこに座ると光が斜めに入ってくる。
それだけで、「特別な時間」になります。
天窓でも、スリット窓でも、隣室からの間接光でもいい。
「光の入り方が見える場所」に、ヌックを置いてください。


どこにヌックをつくるか ― 場所別の考え方

① 階段下ヌック

もっとも自然にヌックになる場所です。
天井が斜めになっていることで、自動的に「包まれる感覚」が生まれます。
収納にしてしまいがちですが、少しベンチを置いて腰かけられるスペースにすると、家の中で一番居心地のいい「隙間」になることがあります。

② 窓辺のベンチシート

出窓や壁の凹みを活かして、床から400mm程度の高さにベンチシートをつくる。
窓から光が入り、下に収納もとれる。
シンプルですが、これが一番「使われるヌック」になりやすいです。

③ リビングの「少し奥まった角」

設計段階でリビングの一部を90mm〜300mm程度凹ませる、あるいはリビング脇に薄い壁を1枚つくる。
それだけで、「ここだけ空気が違う場所」が生まれます。
完成してから気づくことが多いのですが、子どもが自然とそこに座っていたり、読書はそこでするようになる。

「設計で意図する」か「空間の余白から生まれる」か、ヌックには二種類あります。どちらも正解です。


建築士のひとりごと ― ヌックという思想について

家を設計していて、「機能」だけを追いかけると、どこかで行き詰まることがあります。
動線を最適化して、収納を最大化して、LDKを広くして。
それは全部正しい。
でも「住んでみたら、なんか落ち着かない」という家も、実際にあります。
その違いは何かと考えたとき、私は「その人が帰ってこられる場所があるかどうか」だと思うことがあります。

広いリビングは、家族みんなの空間です。寝室は休む場所。
でも「ただそこにいるだけでいい」「何もしなくてもいい」という空間は、どこにもない。
ヌックは、その「余白」をかたちにしたものだと思っています。

家は機能でできている。でも暮らしは、余白でできている。

間取りを考えるとき、ぜひ「どこに帰ってくるか」を考えてみてください。
玄関でも、寝室でも、キッチンでもなく――自分だけの小さな隙間。
それがある家は、少し違う温度を持っています。

📣 ヌックを間取りに取り入れたい方へ

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「ヌック、いいな」と思っても、後から追加するのはなかなか難しい。間取りが確定する前に、一度専門家と話しておくことで、こういう「小さな余白設計」を盛り込みやすくなります。


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「ヌックって、後から付け足せないんですよ。
設計段階に盛り込むのが、ほぼ唯一のタイミング。

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✅ まとめ ― ヌックをつくる前に確認したいこと

✔ ヌックは「部屋」ではなく「包まれる隙間」
✔ 天井高さは1900〜2100mmが心地よい
✔ 間口900〜1200mm・奥行き600〜900mm程度
✔ 「家族の気配を感じながら、視線に入りにくい場所」
✔ 光が差し込む位置に置くと、特別感が増す
✔ 設計段階でしか盛り込めない。後からは難しい

ヌックは、「つくることで生まれる」空間です。あとから欲しくなっても、そのままでは追加できません。

家づくりを考えているなら、「どこに自分の居場所をつくるか」を、最初から話し合ってみてください。それだけで、間取りの見え方が少し変わります。


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