寸法(mm)と人の動きから、間取りの「ちょうどいい」を決める。一級建築士の視点で、実施設計の考え方をまとめたシリーズです。
結論:和室の建具は、開けたときにLDKとひと続きになり、閉じたときに個室として落ち着けることが大切です。引き込み戸で全開にできる形が理想です。
- 引き込み戸は、壁の中に扉をしまい、開口を全開にできる
- 引き違い戸は、常に半分ほどが扉でふさがる
- 建具を引き込むには、扉と同じ幅の壁が必要
- 閉じたときの音・光・視線の遮り方も考える
和室は、建具で完成する
リビング横の和室は、普段は開けてリビングの延長に、来客のときは閉じて客間に、と使い分けます。その使い分けを決めるのが建具です。
引き戸と開き戸
和室の建具は、ほとんどの場合引き戸が向いています。開き戸は、扉が開く範囲に物が置けず、開口も狭くなりがちです。
引き込み戸と引き違い戸
| 建具の種類 | 開けたとき | 必要な条件 |
|---|---|---|
| 引き込み戸 | 扉が壁の中や横に隠れ、開口を全開にできる | 扉と同じ幅の壁(または引き込むスペース) |
| 引き違い戸 | 2枚が重なり、開口の約半分がふさがる | 特になし |
| 4枚引き違い | 開口の約半分が開く | 広い開口 |
| アウトセット引き戸 | 壁の外側に扉が出る。後付けしやすい | 扉が動く分の壁 |
LDKとひと続きに使いたいなら、引き込み戸がおすすめです。
枚数の考え方
開口が広いほど、建具の枚数も増えます。たとえば幅1800mmの開口を全開にするなら、900mmの扉2枚を両側に引き込む方法などがあります。引き込む先の壁が足りるかを、図面で確かめましょう。
開けたときの設計
- リビングの床と和室の床の段差(小上がりにするか、フラットにするか)
- 床の素材の違い(フローリングと畳)の見え方
- 天井の高さや仕上げのつながり
閉じたときの設計
- 音:建具は壁より音が伝わりやすい。客間として使うなら気になることも
- 光:すき間からリビングの光が入ると、寝室として使いにくい
- 視線:すりガラスや障子風の建具は、光は通すが視線をやわらげる
建具をしまうスペース
引き込み戸を全開にするには、扉の幅と同じだけの壁の長さが必要です。その壁には、窓やスイッチ、コンセントを付けられないこともあるので、間取りの段階で確かめておきましょう。
素材の選び方
| 素材 | 特徴 |
|---|---|
| 無地の板戸 | すっきり。リビングとなじむ |
| 障子風(樹脂和紙など) | 光をやわらかく通す。和の雰囲気 |
| すりガラス入り | 光を通し、閉じても明るい |
| 格子 | すき間から気配が感じられる |
和室の建具を決める5つのコツ
- 引き込み戸で全開にできるか確かめる
- 引き込む先の壁の長さを確保する
- 床の段差と素材のつながりを考える
- 閉じたときの音・光・視線を考える
- リビングの雰囲気に合う素材を選ぶ
和室の建具は、「閉じたときの姿」だけで選ばれることが多いのですが、実際には開けている時間のほうが長い家庭がほとんどです。開けたとき、リビングとどうつながって見えるかを、図面と一緒に確かめてみてください。
わかっていること、いないこと
| テーマ | わかっていること | 注意点 |
|---|---|---|
| 引き込み戸 | 開口を全開にでき、LDKとひと続きに使える | 引き込む壁が必要で、壁の使い方が限られる |
| 建具と音 | 建具は壁より音が伝わりやすい | 建具の重さや気密性で、伝わり方は変わる |
| 素材と光 | すりガラスや障子風の建具は、光を通しながら視線をやわらげる | 夜は、照明の光が反対側に透けることもある |
和室の建具を決める前に確かめたい5つのこと
- □ 建具を全開にして、LDKとひと続きにできるか
- □ 引き込む先の壁の長さがあるか
- □ 床の段差と素材のつながりを考えたか
- □ 閉じたとき、音や光が気にならないか
- □ 建具の素材が、リビングとなじむか
和室の建具のよくある質問(FAQ)
Q. 建具なしのオープンな和室はどうですか?
LDKとのつながりは最もよくなりますが、客間や寝室として閉じることはできません。将来の使い方も考えて決めましょう。
Q. ロールスクリーンで仕切るのはどうですか?
費用を抑えて、視線を遮ることはできます。音や光はほとんど遮れないので、客間や寝室として使う場合は向いていません。
Q. 小上がりの和室にするメリットは?
床に段差があるので、腰かけやすく、段差の下を引き出し収納にできます。小さな子どもや高齢の家族には、段差がつまずきの原因になることもあります。
まとめ|建具で、和室の使い方が決まる
- 和室の建具は、引き込み戸で全開にできる形が理想
- 引き込む先の壁の長さを確保する
- 開けたときのつながりと、閉じたときの音・光・視線の両方を考える
- 素材で、和室とリビングの雰囲気がなじむ
和室は、建具を開けたときと閉じたとき、両方の姿を設計することで、毎日使える部屋になります。
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シリーズの前の回。和室の使い方はどう考える?という話です。

シリーズの次の回。和室は本当に必要?という話です。

インテリア設計の教科書。和モダンの余白と陰影の話です。



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