子育て、共働き、ふたり暮らし、老後、二世帯。暮らし方から家を考える。一級建築士の視点で、家族ごとの「いい家」をまとめたシリーズです。
結論:二人暮らしで大切なのは、LDKの広さより気配のつながりです。一緒にいても、それぞれのことができる距離感が、居心地をつくります。
- 広すぎるLDKは、会話が減り、落ち着かないこともある
- なんとなく一緒にいる時間が、暮らしを支える
- 少し囲まれた場所があると、人は落ち着く
- 在宅ワーク時代は、同じ部屋で別のことができる空間が強い
「LDKは広いほうがいいですよね?」
家づくりで、LDKの広さは人気の条件です。20畳、25畳と、広さを競うように考えることもあります。
でも、二人で暮らす家では、広すぎるLDKが逆に孤独になることがあります。この記事では、二人暮らしに合うLDKの考え方をまとめます。
広すぎるLDKは、会話が減ることもある
広いLDKで、ひとりはキッチン、ひとりはソファの端。声をかけるには少し遠く、相手が何をしているかも見えにくい。気づけば、同じ部屋にいるのに別々に過ごしていることがあります。
「なんとなく一緒にいる」が、暮らしを支える
二人暮らしでは、何か特別なことをするより、同じ空間で、それぞれ好きなことをしている時間が長いものです。本を読む人と料理をする人が、ちょうどいい距離で気配を感じられる。それが居心地のよさにつながります。
「少し囲まれている」と、人は落ち着く
広い空間の真ん中より、壁際や窓辺、少し天井が低い場所のほうが落ち着く、という人は多いものです。ソファの背に壁がある、窓際にベンチがある、キッチンの横に小さなカウンターがある。少し囲まれた居場所があると、広いLDKでも落ち着いて過ごせます(#13 居心地と余白)。
| LDKのつくり方 | 起きやすいこと | 向いている暮らし |
|---|---|---|
| とにかく広い一室 | 開放的だが、落ち着く場所がない | 来客が多い、大人数で集まる |
| 広さはほどほど、居場所が複数 | 一緒にいながら、それぞれのことができる | 二人暮らし、在宅ワーク |
| 小さめで、家具と距離が近い | 会話が増え、冷暖房も効きやすい | コンパクトに暮らしたい |
映えるLDKが、疲れることもある
吹き抜け、大開口、大きなアイランドキッチン。写真で見ると魅力的ですが、冷暖房が効きにくい、音が響く、落ち着く場所がない、ということもあります。
在宅ワーク時代は、「同室別空間」が強い
ふたりとも在宅で働く日があるなら、同じLDKの中で、視線は合わないけれど気配は感じられる場所をつくると便利です。カウンターの向きを変える、腰の高さの家具で区切る、といった工夫でできます(#07 在宅ワーク)。
「広さ競争」から降りてもいい
LDKの畳数は、比べやすい数字です。でも、居心地は畳数では決まりません。小さくても心地いいLDKは、冷暖房費も掃除の手間も少なく、二人の距離も近くなります。
二人暮らしのLDKをつくる5つのコツ
- 二人の過ごし方を書き出す:平日の夜、休日、在宅ワークの日
- 居場所を複数つくる:ソファ、ダイニング、窓辺、カウンター
- 少し囲まれた場所を:壁際、窓際、天井の低い一角
- 気配はつながり、視線は合わない配置に
- 畳数より、家具の配置と距離で考える
LDKの広さを決めるときは、畳数よりも、ソファとキッチンの距離、ダイニングから見える景色を図面で確かめてみてください。二人がそれぞれの場所に座ったとき、声が届き、でも視線はぶつからない。そんな配置が、二人暮らしにはちょうどいいことが多いです。家具と余白の関係は、ソファを置く前に、余白を考えるでも書いています。
わかっていること、いないこと
| テーマ | わかっていること | 注意点 |
|---|---|---|
| 空間の広さと居心地 | 広さだけでは居心地は決まらず、居場所のつくり方が大きく影響する、というのは設計の実務で広く知られている | 好みには個人差が大きい |
| 囲まれた場所の落ち着き | 壁際や窓際を好む傾向はよく語られる | 建築でよく引用される理論でも、研究の裏付けは一貫していない |
| LDKの広さと冷暖房 | 空間が大きいほど、冷暖房の負荷は大きくなる | 断熱性能や吹き抜けの有無で変わる |
LDKを決める前に確かめたい5つのこと
- □ 二人は、LDKのどこで、何をして過ごすことが多いか
- □ それぞれが落ち着ける居場所があるか
- □ 声は届き、視線はぶつからない配置か
- □ 在宅ワークの場所をLDKにとるか
- □ 広さに見合った冷暖房と掃除の手間を考えたか
二人暮らしのLDKのよくある質問(FAQ)
Q. 二人暮らしのLDKは、何畳くらいがいいですか?
暮らし方によりますが、畳数より、居場所の数と家具の配置で考えるのがおすすめです。来客が少なく、二人で過ごす時間が中心なら、広すぎないLDKのほうが落ち着くことも多いです。
Q. 将来子どもができたら、狭くなりませんか?
LDKの隣に、つなげて使える部屋を用意しておくと、将来の変化にも対応できます。
Q. オープンなLDKと、区切られたLDK、どちらがいいですか?
どちらにも良さがあります。オープンにしながら、家具や段差、天井の高さの変化で「ゆるく区切る」と、つながりと落ち着きを両立できます。
まとめ|二人暮らしは、広さより空気感
- 広すぎるLDKは、会話が減り、落ち着かないこともある
- なんとなく一緒にいる時間が、暮らしを支える
- 少し囲まれた居場所があると、人は落ち着く
- 畳数より、居場所の数と距離感で考える
二人暮らしの家に必要なのは、広い空間ではなく、お互いの気配をちょうどよく感じられる距離です。広さを競う前に、二人がどこでどう過ごしたいかを話してみてください。
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次に読む
シリーズの前の回。夫婦ふたり暮らしに子ども部屋はいらない?という話です。

シリーズの次の回。書斎があれば快適?在宅ワーク設計の話です。

なんか居心地いい家の正体。余白の設計の回です。



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