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ヒートショックを防ぐ間取り|脱衣室と浴室の”温度差”を、設計でなくす

実施設計の教科書#22 ヒートショックを防ぐ間取り― 脱衣室と浴室の温度差 いえのキホン
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実施設計の教科書 #22

寸法(mm)と人の動きから、間取りの「ちょうどいい」を決める。一級建築士の視点で、実施設計の考え方をまとめたシリーズです。

SHEET — ヒートショック対策の要点S = 1:実施設計の教科書 22 / kobayan

結論:ヒートショックは温度差で起きると考えられています。脱衣室と浴室を、ほかの部屋との温度差が小さい場所にすることが、設計でできる一番の対策です。

  • 入浴中の急死は年間約1万9,000人という推計があり、冬に多い
  • 寒い脱衣室で服を脱ぎ、熱いお湯につかると、血圧が大きく変動する
  • 脱衣室は北側・外壁側・窓ありになりやすく、冷えやすい
  • 脱衣室の暖房、浴室暖房、家全体の断熱で温度差を小さくする

お風呂は、命にかかわる空間でもある

冬の寒い日、暖かいリビングから脱衣室に行くと、ひやっとすることがあります。この「温度差」が、入浴中の事故に関係していると考えられています。

厚生労働省の研究では、入浴中の急死は年間約1万9,000人にのぼるという推計があります。家庭の浴槽での高齢者の溺死だけでも、2019年に4,900人と、交通事故の死者数を上回っています(#21)。そして、こうした事故は冬(11月〜3月)に多く起きています。

ヒートショックのしくみ

  1. 暖かい部屋から、寒い脱衣室へ移動する
  2. 寒さで血管が縮み、血圧が上がる
  3. 熱いお湯につかると、血管が広がり、血圧が下がる
  4. 浴槽から急に立ち上がると、さらに血圧が下がり、ふらつきや意識を失うことがある

この急な血圧の変動が、体に大きな負担をかけると考えられています。特に高齢の人や、高血圧などの持病がある人は注意が必要ですが、持病のない人でも起きることがあるとされています。

なぜ、脱衣室は寒いのか

寒くなりやすい理由設計での対策
北側に配置されやすい暖かい部屋とつなげる配置、または暖房を
外壁に面している壁の断熱をしっかり
窓がある窓を小さく、または断熱性の高い窓に
暖房がない脱衣室にも暖房を計画する
廊下の先にあり、暖かい部屋から遠いリビングや寝室の近くに水回りを

水回りは、間取りの中で後回しにされやすく、日当たりの悪い北側にまとめられがちです。それが、冬の寒さにつながっています。

間取りで防ぐ

  • 脱衣室と浴室を、暖かい部屋の近くに配置する
  • 廊下を通らずに、リビングから水回りに行ける動線にする
  • 脱衣室の窓は小さく、断熱性の高い窓に
  • トイレも同じように寒くなりやすいので、あわせて考える

浴室暖房・脱衣室暖房

浴室暖房乾燥機があると、入浴前に浴室を暖めておけます(#25 浴室乾燥機)。脱衣室には、壁に取り付ける小型の暖房や、天井に埋め込む暖房もあります。コンセントや電源の位置を、設計の段階で決めておきましょう。

住宅性能も、とても大切

家全体の断熱性能が高いと、暖房していない脱衣室や浴室も冷えにくくなり、部屋ごとの温度差が小さくなります。窓の断熱や、家全体の断熱等級を確かめておきましょう(性能設計の教科書 #07 高断熱窓)。

入浴の仕方も大切

消費者庁は、入浴前に脱衣所や浴室を暖める、湯温は41度以下、湯につかるのは10分までを目安にする、浴槽から急に立ち上がらない、食後すぐや飲酒後の入浴を控える、といった点をすすめています。

なお、「41度・10分」の目安について、厚生労働省の研究報告では、科学的な根拠はまだ十分とはいえないとも書かれています。温度差を小さくすることと、無理のない入浴を心がけることが大切です。

ヒートショックを防ぐ5つのコツ

  1. 水回りを北の端に追いやらない:暖かい部屋の近くに
  2. 脱衣室に暖房を計画する:電源や設置場所を設計段階で
  3. 浴室暖房を検討する:入浴前に浴室を暖める
  4. 窓と断熱を確かめる:脱衣室・浴室の窓、家全体の断熱
  5. トイレもあわせて考える:夜中のトイレも温度差が大きい
建築士のメモ

間取りの打ち合わせでは、日当たりのいい場所はリビングに、水回りは北側に、という配置になりがちです。それ自体は合理的ですが、そのぶん脱衣室と浴室の寒さ対策を忘れないでください。冬の夜、リビングから脱衣室に移動する場面を、図面の上で想像してみてください。

わかっていること、いないこと

テーマわかっていること注意点
入浴中の急死年間約1万9,000人という推計がある推計であり、すべてがヒートショックによるものとは限らない
冬に多い浴室での事故は冬に多く起きている地域や住宅の断熱性能によって違う
41度・10分の目安消費者庁が安全な入浴の目安として示している科学的な根拠はまだ十分とはいえない、とする研究報告もある

ヒートショック対策を確かめる5つの質問

  • □ 脱衣室と浴室は、暖かい部屋の近くにあるか
  • □ 脱衣室に、暖房を置く場所と電源があるか
  • □ 浴室暖房を検討したか
  • □ 脱衣室・浴室の窓の断熱性能を確かめたか
  • □ 家全体の断熱等級を確かめたか

ヒートショックのよくある質問(FAQ)

Q. 高断熱の家なら、暖房はいりませんか?

高断熱の家でも、冬の脱衣室や浴室はほかの部屋より低くなりがちです。断熱で温度差を小さくしたうえで、必要に応じて暖房を使うのがおすすめです。

Q. 今の家でできる対策は?

入浴前に浴室のシャワーでお湯を出して浴室を暖める、脱衣室に小型の暖房を置く、窓に断熱シートや内窓を付ける、といった方法があります。

Q. 若い家族でも気をつけるべきですか?

持病のない人でも、飲酒後や疲れているときには体調が急変することがあります。家族全員の安全のために、温度差を小さくしておくことが大切です。

まとめ|温度差をなくす設計

  • 入浴中の急死は年間約1万9,000人という推計があり、冬に多い
  • 寒い脱衣室と熱いお湯の温度差で、血圧が大きく変動する
  • 水回りを北の端に追いやらず、暖房と断熱で温度差を小さくする
  • 入浴の仕方も大切。急に立ち上がらない

ヒートショック対策は、特別な設備より、家の中の温度差を小さくすることが基本です。冬の夜の入浴を思い浮かべて、水回りの配置と暖かさを確かめてみてください。

おすすめ|ヒートショックは第三者目線が効く

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この記事を書いた人|メガネ建築士(一級建築士・ハウスメーカー設計士/150棟以上の住宅設計)
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