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「続かない」のは性格のせいじゃない|建築士が考える、新しい家で習慣をつくり直すチャンス

いえのキホン
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連載|建築士の思考実験 #05

人はなぜ判断を間違えるのか。そして、どう考えれば納得できる家づくりや暮らしにつながるのか。心理学・認知科学の知見と、設計の現場で見てきたことを重ねて考える連載です。

SHEET — 続かないと習慣の要点S = 1:建築士の思考実験 05 / kobayan

結論:続かないのは性格のせいとは限りません。習慣は意思より環境に強く結びついています。だからこそ、引っ越し直後は古い習慣がほどけ、新しい習慣を根づかせやすい時期です。

  • 続かない理由は一つではない。自分の型を知ると、責める必要がなくなる
  • 生活が大きく揺れた時期にやめるのは、正しい優先順位であることも多い
  • 引っ越し後の数か月は、行動を変えやすい「機会の窓」だとする研究がある
  • 続けたいことは、出しっぱなしにできる場所と、動線の途中に置く

ジムに通い始めたけれど、行ったのは最初の数回だけ。英語の参考書は、最初の数ページで止まったまま。思い当たる人は多いのではないでしょうか。

家づくりの打ち合わせでも、似た話をよく聞きます。「家を建てたら、毎朝ヨガをしたい」「書斎ができたら、資格の勉強を再開したい」。そして入居して数年後、その部屋が物置になっている。設計者としては、少しさみしい場面です。

こういうとき、多くの人は自分を「飽きっぽい」「意思が弱い」と責めます。でも、続かない理由は一つではありません。そして習慣は、意思より環境に引っぱられることがわかっています。

この記事では、続かない理由をいくつかの型に分けて考えたうえで、建築士として一つの提案をします。新しい家に住み始める時期は、習慣をつくり直すまたとない機会だ、という話です。

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続かない理由は、一つではない

「自分は飽きっぽい」。続かなかったとき、多くの人がこの一言で自分を裁きます。でも、やめた理由をよく見ると、いくつかのまったく違う型に分かれます。

ここでは、ある動画で紹介されていた5つの型を参考に整理してみます。なお、この5分類は心理学で確立された分類ではなく、考えるための枠組みです。それぞれの型に関係する研究の確かさも、あわせて書いておきます。

型どんなやめ方か関係する知見研究の確かさ
1. 解読型仕組みがわかった時点で興味が消える特定の研究というより、動機の向き先の話説明のための区分
2. 初心者型伸びが止まる「踊り場」で、別の新しいことへ移る上達には伸びが止まって見える時期があることは広く知られる一般的な知見
3. 他人燃料型ほめられなくなると止まる動機が自分の内側にあるか外側にあるかで、続き方が変わる(自己決定理論)研究が多い
4. ゴール待ち型終わりが見えないものに耐えられない中断したものを「再開したくなる」傾向は確認されている。一方、「終わっていないことをよく覚えている」効果は、2025年の分析で確認されなかった一部のみ確か
5. 嵐の中型引っ越し・転勤・出産・家族の入院の直後にやめている生活の環境が変わると、それまでの習慣が途切れやすい研究が多い

とくに知っておきたい「5. 嵐の中型」

自分を「根性がない」と思っている人に、やめた時期を書き出してもらうと、興味深いことが起きます。ランニングをやめたのは引っ越しの数か月後。勉強をやめたのは転勤の直後。ジムをやめたのは子どもが生まれた年。

生活の土台が揺れたとき、新しい環境に慣れることや、家族の一大事に対応することが優先されるのは当然です。いちばん後回しにできるものから手放すのは、挫折ではなく正しい優先順位です。

環境が変わると習慣が途切れる。この事実は、裏返すと家づくりにとって大きな意味を持ちます。それは後半で詳しく書きます。

外からの動機も、悪者ではない

「3. 他人燃料型」について一言だけ補足します。ほめられたい、認められたいという外からの動機は、続かない原因として語られがちです。ただ、自己決定理論の研究でも、外からの動機がすべて悪いわけではありません。きっかけは外からでも、続けるうちに「自分にとって大事だから」に変わっていくこともあります。

「やめた後に残るもの」について

動画では、やめたことで身についた力が別の分野で生きる、という話も紹介されていました。近い分野でなら、そういうことは確かに起きます。ただ、遠く離れた分野にまで力が移るかについては、研究をまとめた分析で、ほとんど確認されていません。「やめた経験は無駄にならない」と言い切るより、何が残ったかを自分で確かめてみるくらいの距離感がよいと思います。

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習慣は、意思より環境に宿る

習慣の研究では、毎日くり返す行動の多くは、意思で選んでいるというより、場所や時間、目に入るものといった環境に引き出されていると考えられています。朝起きたらコーヒーを淹れる、帰ったらソファに座ってテレビをつける。そうした行動は、その場の環境とセットで体に染みついています。

だから、環境が変わると習慣はほどけます。「5. 嵐の中型」の人が引っ越しや転勤の直後にやめてしまうのは、この仕組みとも一致しています。

引っ越し直後は「習慣をつくり直す窓」が開いている

この仕組みには、うれしい裏面もあります。イギリスの研究チームは、800人を対象にした実験で、最近引っ越したばかりの人のほうが、新しい行動を促す働きかけの効果が出やすいことを報告しました(Verplanken & Roy, 2016)。古い習慣が一時的にほどけているので、新しいやり方を受け入れやすいのです。その「窓」は、この研究では引っ越し後およそ3か月だったとされています。

この研究は環境にやさしい行動を対象にしたもので、効果も大きくはありません。それでも、家づくりをする人にとっては大事なヒントです。新しい家に住み始める時期は、習慣をつくり直しやすい時期かもしれない、ということだからです。

続けたいことが「自然に起きる」家にする5つの工夫

「家を建てたらやりたいこと」を本当に続けるには、意思に頼るより、家の環境のほうを整えておくのが近道です。

  1. 道具を「出しっぱなし」にできる場所をつくる:ヨガマットを毎回クローゼットから出す、楽器をケースから出す。この一手間が、やめるきっかけになります。壁にギターを掛けられる場所や、マットを広げたままにできる一角があると、始めるまでの手間がぐっと減ります
  2. 専用の部屋より「通り道」に置く:書斎やトレーニング室を独立させると、わざわざ行く場所になりがちです。リビングの一角や階段ホールのカウンターなど、毎日通る動線の途中のほうが、自然と手が伸びます
  3. 入居後の3か月を「習慣の設計期間」にする:引っ越し直後に何をどこに置くかで、その後の暮らしの形が決まりやすくなります。新しく始めたいことは、この時期に場所と時間を決めてしまいましょう
  4. 「嵐の時期」を想定しておく:子育てや介護など、生活が大きく揺れる時期は必ず来ます。その時期でも回る家事の仕組み(片付けやすい収納、洗濯の短い動線)を、最初から組み込んでおくと安心です
  5. 使わなくなっても困らない部屋にする:趣味の部屋は、その趣味をやめた後も別の使い方ができるように、用途を決めすぎない設計にしておくと、物置になりにくくなります
👓 建築士のメモ

「専用の部屋をつくったのに使わなくなった」という話は、家づくりではよく聞くものです。一方で、リビングの横の小さなカウンターのように、毎日通る場所にある居場所は、使われ続けやすい傾向があります。続くかどうかを決めるのは、部屋の広さより、毎日その前を通るかどうかであることが多いと感じます。掃除道具の置き場所も同じ考え方で、掃除道具は、しまわない方がうまくいく理由で書いています。

「やりたい暮らし」を、間取りに反映してもらう PR

家を建てたら始めたいこと、続けたいことは、打ち合わせで伝えないと間取りには反映されません。同じ暮らし方の要望で複数社に間取りを出してもらうと、道具の置き場や動線上のカウンターなど、習慣が続く工夫をどこまで提案してくれるかを見比べられます。

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家を建てない人も、引っ越しや模様替えはチャンス

新築でなくても、引っ越しや大きな模様替え、リフォームのあとは、同じように習慣が変わりやすい時期です。「次に何かを始めるなら、環境が変わったタイミングで」と覚えておくと、無理なく始められるかもしれません。

家を建てたら始めたいことを、続けるための5つの質問

  • □ それを始めるとき、道具を取り出す手間は何回あるか
  • □ その道具は、出しっぱなしにしておける場所があるか
  • □ その場所は、毎日通る動線の途中にあるか
  • □ 入居後の最初の3か月で、いつ・どこでやるかを決めたか
  • □ それをやめたとき、その場所は別の使い方ができるか

続かないと習慣のよくある質問(FAQ)

Q. 自分はどの型か、どうやってわかりますか?

これまでにやめたことを、やめた時期と一緒に書き出してみるのがおすすめです。引っ越しや転職などの時期と重なっていれば「嵐の中型」、伸びが止まった時期と重なっていれば「初心者型」の可能性があります。ただし、この5つの型は確立した分類ではないので、自分を責めないための見取り図として使ってください。

Q. 趣味の部屋や書斎はつくらないほうがいいですか?

つくってかまいません。大事なのは、その部屋が「わざわざ行く場所」にならないことと、使わなくなっても別の用途に変えられることです。独立した部屋にするか、リビングの一角にするかは、続けたいことの性質で選ぶとよいと思います。

Q. もう住んでいる家でも、習慣は変えられますか?

変えられます。模様替えやリフォームのように環境が変わるタイミングは、習慣を変えるきっかけになりやすいと考えられています。まずは道具の置き場所を、使う場所の近くに移すことから始めてみてください。

まとめ|続く暮らしは、環境からつくれる

  • 続かない理由は人によって違う。「飽きっぽい」の一言で自分を責めなくていい
  • 生活が揺れた時期にやめるのは、正しい優先順位であることも多い
  • 習慣は環境に宿る。引っ越し直後は、習慣をつくり直しやすい時期だとする研究がある
  • 続けたいことは、出しっぱなしにできる場所と、毎日通る動線の途中に置く

これまで続かなかったのは、あなたの性格のせいではなく、続けられる環境がまだ一度も整っていなかっただけかもしれません。新しい家は、その環境を最初からつくれる、またとない機会です。

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この記事を書いた人|メガネ建築士(一級建築士・ハウスメーカー設計士/150棟以上の住宅設計)
設計実務の目線で「後悔しない家づくり」を発信しています。 プロフィール・運営者情報 ▶

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